新年のごあいさつ(やまびこ福祉会を支える会)

[ やまびこ福祉会 ] 2011.01.03

「障害者自立支援法廃止後の全く新しい政策づくりに向けて」

 新しい拠点での活動が動き出す、やまびこ福祉会にとっては希望と期待に満ちた2011年が明けました。今年も皆さまのお力添えをよろしくお願いします。

さて、やまびこ福祉会からもたくさんの方が参加された、「きょうされん全国大会」(昨年10月、福岡市)に私も参加しました。私は「政策・運動分科会」において、障害者自立支援法を廃止して、まったく新しい政策をつくる上で、いくつか大切だと思うことを話させていただきました。

1つは、障害とは何か、についてです。障害の概念として、医学モデルに代わる社会モデルが期待されています。その中身には、さまざまな社会的な障壁(しょうへき)があげられています。しかし、私はそれだけでは不十分だと思っています。あれもこれもとただ並べるだけではなく、何が基本的な問題かを明確にして、それを機能的な障害の有無にかかわらず地域の人たちと一緒に力をあわせることができる共通の課題として示す必要があると考えているからです。私は障害というときの基本問題を「まともな雇用保障と所得保障がないことの問題」だと考えています。それは今日の働く人たちや高齢者にとっても共通の問題です。共通の課題というときの「共通」とは、今日の「労働者階級にとって共通の問題」ということが大切です。障害者と家族も労働者階級の一員だからです。

2つ目には、それを実現するための、最低賃金額の引き上げ(時給1,000円以上)と障害者等の「保護雇用」の創設です。政府による賃金保障(保護雇用)制度は日本にありませんが、ヨーロッパでは1960・70年代から行われています。最賃の引き上げと保護雇用が実現すれば、障害者を含めた労働者全体の経済的基盤は安定します。しかし、いまの自立支援法は、「自立支援」=「(先の雇用が保障されないままの)就労支援」であり、まともな仕事に就くことが困難なだけでなく、労働者全体の雇用・労働条件を引き下げることにつながります。障害者自立支援法の応益負担は、障害のある人たちと家族の尊厳を深く傷つけました。自立支援法の最大の問題は、この応益負担とともに、雇用と所得の保障をしないままに、「福祉から就労へ」(福祉の給付を抑制、福祉から切り離して、不安定雇用に就かせる)という政策を導入したことです。障害者運動はこの点をもっと批判すべきだと私は考えています。

3つ目に、応益負担の廃止が必要なことはいうまでもありませんが、自立支援法の利用者への現金補助方式(事業所の代理受領)を廃止して、「現物保障・10割給付(無料)原則」を求めることです。自立支援法によって利用できる制度・サービスは、国・自治体による現物の保障ではなく、受給者証を持って自分で事業所と契約して利用料を払ったあとで、費用の残りを国・自治体が現金で補助する仕組みです。介護保険法と障害者自立支援法は、医療制度や保育制度とは異なり、現物保障の責任が国や自治体にはない仕組みに変えられてしまっています。たとえ、応益負担を廃止しても、介護保険法と同じ仕組みを持っている以上、つねに統合の不安にさらされてしまいます。介護保険と完全に決別し、国と自治体の責任を明確にするために、応益負担の廃止とあわせて現金補助方式から現物保障方式に転換していく運動が大切です。

4つ目に、きょうされん運動の原点に帰ることです。働いて収入を得て、収入を上げることが本来の目的ではなかったはずです。今の政府の政策は、障害者が働いた分だけ、国の責任と負担をなくしていくというものです。働くことを通して社会への完全参加と平等を実現していくために、働くことの社会的条件をどうやってつくっていくか。その展望を切り開くために、今年も学習と交流を重ねていきましょう。よろしくお願いします。

やまびこ福祉会を支える会 会長 高林 秀明(熊本学園大学准教授)